第6話:コンピューター

1995年にマイクロソフト社のWindows95の登場以来、パソコンの家庭への普及率は格段に上がりました。ここ最近のスマートフォン・タブレット端末の普及拡大で少し影が薄くなっているとはいえ、やはり大容量のデータを扱う、複雑な処理を行う場合は欠かせない端末です。

コンピューターの特徴

基本的な構造はスマートフォン・タブレット端末と同じ

パソコンの中身は、スマートフォン・タブレット端末と大きな違いはありません。基本的な構造や使用する電子部品など多くの部分で、同じ機能のものが同じ役割で利用されています。大きな違いは、拡張性にあります。周辺機器を接続して使用したり、機種によってはユーザーが自ら部品交換ができるものもあります。

また、ほとんどの機種は、入力機器としてキーボードやマウスが有り、本体に電源を内蔵しています。つまり、それだけ「めっき」が活躍できる可能性があるということになります。

ここからは、コンピューターで標準的であり、かつ特有の部分に注目し、前回ご紹介したスマートフォン・タブレット端末とは違う部分で使われている「めっき」についてお話しましょう

コンピューターとスマートフォン・タブレットの違いとは?

拡張性の違い

コンピューターとスマートフォン・タブレットを比較した場合、大きな違いとして、その拡張性があげられます。

パソコンは各種コネクタ類に周辺機器(キーボード、マウス、ディスプレイ、外付けハードディスクなど)を接続し使用できます。コネクタ類は第5話で、お話したように耐久性や通電性が必要な部分で「めっき」(一般的にはニッケルめっき)が使用されています。また、周辺機器自体にも「めっき」が多く使用されています。

大きなデータを保存できる

近年、クラウド化(ネットを介して外部のサーバーなどの記憶装置にデータを保存すること)が普及し、ハードディスクがないコンピューターも出てきています。ハードディスクの時代は終わったかのように思われがちですが、クラウドで使用されている記憶装置自体がハードディスクでできています。大容量のデータを扱うには、やはりハードディスクはなくてはならない存在です。また、テレビの録画機やカーナビゲーションシステムなどにも使われており、まだまだ多くの場面で活躍中です。今では、容量がTB(テラバイト※注)クラスのハードディスクが気軽に買える値段で販売されており、ひと昔前のサーバークラスの記憶容量が、家庭でも気軽に持てる時代となりました。

※注 TB(テラバイト) : 1TB=約1,000GB(ギガバイト)=約1,000,000MB(メガバイト)=約1,000,000,000KB(キロバイト)=約1,000,000,000,000B(バイト)

ハードディスクとは?

ハードディスクが使われている理由(わけ)は?

パソコンやサーバーでハードディスクが使われる大きな理由としては、まずは記憶容量自体が格段に大きくなり使い勝手が良くなったことと、価格の安さがあります。前述のとおり、TBクラスのハードディスクが、一般的なパソコンに入っていたり、外付け記憶装置としてハードディスクドライブ(HDD)のみを家電店でも手ごろな価格で購入することができるためです。

超精密なハードディスクの仕組み

ハードディスクは、動画で説明しているように、磁性体(記憶媒体)である円盤状のディスクを高速回転させ、ヘッドを動かしデータの読み書きを行っています。データの読み書きを行うためには、ヘッドをディスク(磁性体)に近づける必要があります。すなわち高速回転しているディスクにヘッドを近づけるのです。単純に考えてもディスクの表面に凹凸があるとヘッドと接触し、故障の原因になります。一方で、ヘッドを近づけないとデータの読み取りに支障をきたす可能性があります。

高速回転のディスクとヘッドの間隔の精度は、例えるなら「ジェット機が滑走路上0.数mm上を飛行するような精度が必要」といわれています。それ程、ディスクの表面は平滑でなければならず、それを実現するのが「めっき」技術です。

ハードディスクドライブ(HDD)としての記憶容量は、ディスク1枚(プラッタ)あたりの記憶量×ドライブ内のディスク搭載枚数によって決まります。「めっき」の性能が向上すると、ディスク1枚(プラッタ)あたりの記憶量が増え、ドライブとしての記憶容量が増加します。

ニッケルめっきとハードディスク

ニッケルめっき抜きにハードディスクは語れない!

ハードディスクドライブ(HDD)は多くの部品からできていますが、その多くにニッケルめっきが使われています。しかし、同じニッケルめっきでも使用されている目的が違います。

以下のように、ニッケルめっきのさまざまな機能を利用して、ハードディスクドライブは作られています。

  • アルミディスク(下地処理) [非磁性、平滑性、強度]
  • スイングアーム/磁気ヘッド [非磁性、強度]
  • スピンドルモータ [非磁性、潤滑性]
  • アクチュエータ [非磁性、強度]
  • 筐体(本体ケース)[防磁、強度、防塵]

「めっき」モデル紹介(ハードディスク編)

それでは、ハードディスク基板で行われている「めっき」を中心とした磁性膜形成までの表面処理モデルを紹介しましょう。

前処理工程(ジンケート処理)

①酸化膜を取り除く
めっきを行う前段階として、脱脂・エッチングを行いアルミ上の酸化膜を除去する。

②亜鉛置換膜をつくる
2回目の亜鉛置換処理で亜鉛膜をつけ、「めっき」がつきやすい状況にする。

下地処理(無電解ニッケルめっき)

③下地めっきをつくる
りん(P)の含有量の多いタイプを用いて、非磁性で平滑な皮膜をつくる。

磁性膜をつくる(スパッタリング)

④磁性膜をつくる
乾式めっきの一種・スパッタリングを用いて、表面に磁性膜を形成する。

コンピューターとともに発展した「めっき」の技術

コンピューターは誕生から飛躍的な発展を続け、今では昔のスーパーコンピューター並みの機能・性能を家庭で利用することができるようになりました。その一端を担ってきたのが「めっき」の技術です。

1997年に、IBM社が湿式めっき技術でより高性能部品の製造が可能になったことを発表以来、「めっき」はコンピューターをはじめとするハイテク機器のキーテクノロジーとして活躍してきました。

そして、「めっき」の重要性は、その技術進歩と共に、これからも変わらないでしょう。