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    機械部品へのめっき

    機械部品には多くの金属材料が使われており、摩耗や腐食を防ぐ目的のほか、
    様々な用途でめっきの技術が活用されています。
    今回は、機械部品へのめっきの代表例として、
    自動車や二輪車、時計やカメラに使われるめっき技術についてご紹介します。

    自動車や二輪車の部品にはどのような
    めっきが使われるのか?

    自動車や二輪車には多くのめっきが使われています。外装品・内装品など、見た目で分かる部分はもちろんですが、表面からは見えない機械部品にもめっきの技術が使われ、重要な役割を果たしています。

    具体的には、エンジン関係の歯車(ギア)・シャフトなどの部品に、めっきの硬度・耐摩耗性・潤滑性・平滑性などの機能が利用されています。硬度・耐摩耗性は、部品の表面強度を増すための機能であり、潤滑性・平滑性は、エンジンのシリンダーや歯車(ギア)をスムーズに動かし、効率良く力を伝達するための機能です。

    その代表例として、歯車の表面に利用されているめっきを動画でご紹介します。

    また、自動車・二輪車で利用されているディスクブレーキにも、めっきが使用されています。

    ディスクブレーキとは、タイヤについている円盤状のディスクを両サイドからブレーキパッドで挟み込むことで、減速させる装置です。このディスクブレーキのディスクが、腐食しない(さびない)ことは、大変重要です。

    ディスクが腐食する(さびる)ことで、強度が低下して形状が変化し、ブレーキがかけられなくなることは絶対に避けなければいけません。加えて、ディスク上に発生したさびによって表面がざらざらになり、そのさびがブレーキパッドを傷つけ、減速する能力に影響を及ぼす可能性があります。使用中は表面のさび自体は、ブレーキパッドによって取り除かれて問題がないように思えますが、傷ついたブレーキパッドの能力は回復しないので、大きなリスクになります。さびは消えても、その影響は後々まで残ります。

    めっきの技術は、ディスクの腐食を防ぐという、乗り物の安全上の非常に重要な役割を担っているのです。

    時計やカメラにはどのようなめっきが使われるのか?

    時計へのめっき

    時計の中でも肌に接する腕時計は、装飾や抗菌目的で外側にめっきが使われています。デジタル時計の場合、内部に電子部品が使われ、当然ながらめっきの技術が利用されています。アナログ時計の場合でも、数多くの精密機械部品にめっきが利用されています。

    精密機械部品にめっきが利用されるのは、さびの防止、スムーズな動きのためのほかに、寸法精度のためでもあります。めっきはその処理時間により、金属膜の厚さを正確に計算することができるので、部品をより精密なサイズに調整することができるのです。

    カメラへのめっき

    カメラは、ここ十数年でフィルムからデジタルへと大きな技術革新を遂げました。精密機械部品は、フィルム、デジタルのいずれでも使用され、一眼レフカメラの場合では「レフ(ミラー)」を動作させるための装置や、シャッター部分などで高剛性や遮光性などを与えるためにめっき技術が使用されています。

    デジタル一眼レフカメラでは、機械的な機構は変わらずにデータ処理用のMPU(マイクロプロセッサ)が搭載されており、小さなコンピュータさながらの処理を行っています。もちろん、ここにもめっきの技術が大活躍する電子部品が多数使用されています。

    めっきはフィルム時代から利用されていましたが、デジタル化の進展で、その関係はより深くなったといえます。

    今回は、機械部品へのめっきについてご紹介しました。自動車や二輪車には、機械的な部分や電気的な部分、さらに装飾的な部分でもめっきがたくさん使われており、めっきの全てが集約されていると言えます。
    また、時計やカメラのようにデジタル化が進む機器においては、機械式では機械部品、デジタル式では電子部品にめっきが使われています。めっきは形態や様式が変わっても使い続けられる技術として、現在も進化を続けています。

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