第3話:「めっき」の役割

日常生活と「めっき」

身近に、いろいろと、こんなところにも…

第1、2話では、「めっき」が身の回りの多くの場面で活躍し、歴史的に古い技術でありながら現代のキーテクノロジーとして活躍していることを話してきました。おそらく、現代の生活で「めっき」の技術が利用されているものにふれないで1日を過ごすことは難しいでしょう。

「めっき」は、その美しさ、安全性、機能性など、さまざまな特長が利用され、影に日なたに活躍しています。「めっき」の役割をご紹介しましょう。

装飾-美しく、なめらかに

見た目の美しさだけではない、目的とは?

一般的に「めっき」で最初にイメージされるのは装飾用途が多いでしょう。

現在でもアクセサリーや調度品、自動車のインテリア・エクステリアにも多く使用されています。装飾という言葉通り、見た目の美しさや高級感を得るために使用されるほかに、実は「軽量化」も大きな目的の一つになります。

例えば自動車の場合、エンブレムやバンパー・フロントグリル・内装のインパネフレームなどに使われていますが、これらをすべて金属製品にしてしまうと、車両重量が重たくなり燃費にも、走行性能にも悪影響を与えてしまいます(もちろん、製造コストも高くなります)。また、アクセサリーも同様です。だって、重いイヤリングやネックレスをずっと着けていると疲れてしまうでしょう?

装飾用途は、見た目の美しさ・質感のためだけのものではなかったのです。

防食-さびない、強固に

「もの」の安全と信頼を守る

さびるとは、大気や水・海水などに含まれる酸素(O)または塩素(Cl)と金属が結合した状態のこと。では、金属はさびると、どうなるのでしょう?

まず、見た目が悪くなりますが、問題はそれだけではありません。ものの安全性・信頼性にも大きな影響を与えます。例えば、物を固定するためのねじがさびると、機能を果たせなくなり故障や事故の原因になります。

金属はさびると脆くなって原形をとどめられなくなったり、他の部品などにも悪影響を及ぼします。さびないことは、もの本来の機能を維持するための必要な対策なのです。

鉄をさびさせないために

私たちの暮らしや産業で最も利用され、さびとは切っても切れない関係の金属と言えば「鉄」です。

鉄は、自然界では酸素と一緒の状態で存在していますので、さびることは鉄にとってごくごく自然なことです。鉄と酸素が一緒になるとそれだけで安定し、強い結びつきになってしまい、鉄同士の結びつきが弱くなります。つまり、さびた鉄は、非常に脆くなってしまいます。

そこで、鉄本来の強さや柔軟性を保つためには、鉄の表面が酸素と接触しないようにする必要があります。そこで「めっき」の出番がやってくるのです。

機能-さまざまな役割

多種多様な機能を利用し、新たな一面を作り出す

「めっき」には、その特性から生まれるさまざまな機能があります。その機能を利用して、現代の多くの分野で活躍しています。では、それぞれの特性ごとに、その役割と代表的な使用例を見ていきましょう。

<電磁気特性> ほとんどの電気製品に活用される

近年の「めっき」技術の代表的な機能の一つです。「めっき」する金属の電気・磁気の特性を機能として利用します。製品の外側からは見えない場合が多いですが、電気を使う製品のほとんどに使用されています。

キーワード代表的な使用例
電気特性:電気の配線・接続部分として利用する
  • 電気伝導
  • 電気抵抗
  • 電気配線
  • プリント基板(配線・接続)
  • 電子部品
  • コネクタ
  • 半導体
磁気特性:「めっき」の膜に磁性を持たせたり、「めっき」の膜で磁力の影響を防いだりする
  • 磁性
  • 非磁性
  • 記憶媒体
  • パソコン・スマートフォンの筐体(ケース)

<機械特性> 機械部品の性能を向上

機械・装置で使用される部品にも、「めっき」が多く使われています。「めっき」処理することで、部品自体に新たな機能を持たせたり、性能を向上させる効果があります。

キーワード代表的な使用例
精密特性:表面の細かな状態をコントロールする
  • 平滑
  • 均一
  • 寸法精度
  • 機械部品(歯車、ねじ、シャフト など)
硬度特性:表面の硬さを強化する
  • 高硬度
  • 耐摩耗
  • 機械部品
潤滑特性:表面の抵抗・摩擦や、水を弾く能力を付与する
  • 潤滑
  • 撥水
  • 離形
  • 粘着
  • 摩耗
  • 摩耗部品
  • 金型
耐熱特性:高温に耐える能力を付与する
  • 耐熱
  • 熱伝導
  • エンジン部品
  • 調理機器
  • 暖房器具

<その他の金属特性> 抗菌・耐久など、新たな機能を追加

「めっき」が金属であることの利点を活かし、製品に新たな機能を追加します。

キーワード代表的な使用例
抗菌特性:金属の抗菌作用を利用する
  • 抗菌
  • 殺菌
  • 食器
  • ドアノブ(取っ手)
耐久特性:悪条件下での使用に耐えるために
  • 耐候
  • 耐薬品
  • 耐塩水
  • 実験器具
  • プラント
  • 外装利用
光学特性:光の反射に関わる利用
  • 光反射
  • 光吸収
  • 反射板
  • 光学製品(カメラ、望遠鏡、測定機器)

現代の暮らし・産業に活かされる「めっき」の多様性

今回は、「めっき」が現代のさまざまな場所で使われていることの一端を、ご覧いただきました。身近な家電・電子製品に触れたときに、中身に「めっき」の技術が使われているかも? と、皆さんに思っていただけると幸いです。

特に機能に関しては、「めっき」が「ものづくりのキーテクノロジー」と言われる理由がご理解いただけたのではないでしょうか。今後、この機能部分について、さらに掘り下げた内容をご紹介していきますので、ぜひご期待ください。