第4話:「めっき」の仲間たち

貴金属(ききんぞく)・卑金属(ひきんぞく)と、めっきの関係

「イオン化」がキーワードです。

「貴金属」という言葉は皆さんよくご存知ですね。では、「卑金属(ひきんぞく)」はご存知ですか?
「貴金属は高価な金属で、卑金属は安い金属かしら…?」
実は、価格で分かれているのはなく、めっきにとてもかかわりのある「イオン化」がキーワードになっています。それぞれの言葉の意味を説明いたしますと、

貴金属:安定していて経時変化(※)が少なく、さびにくい金属。イオン化しにくい。
卑金属:単独ではさびやすい金属。イオン化しやすい
※経時変化:時間の経過により物の性質が変わって行く様子

「イオン化」の度合いを表す指標として「イオン化傾向」というものがあります。少し説明を加えましょう。

「イオン化傾向」とは、液体中での酸化(イオン化)しやすさをあらわしたもので、

小さければ…イオン化しにくい=酸化しにくい=腐食しにくい:さびにくい金属
大きければ…イオン化しやすい=酸化しやすい=腐食しやすい:さびやすい金属

となります。つまり、イオン化しにくい金属を、貴な金属「貴金属」、イオン化しやすい金属を、卑な金属「卑金属」と呼んでいるのです。

貴金属には、金、白金(プラチナ)、銀、銅などが含まれています。これで「貴金属」と呼ばれている理由が分かりますね。それにしても「卑金属」とはひどい呼び名ですね。決して劣っている金属ではないのですが…。

めっきができる元素は?

めっきできる元素は、意外に多い?

元素を原子番号順に並べた表を「元素周期表」と言います。その周期表から、めっきで膜にすることのできる元素、つまり、めっきの仲間を分類してみましょう。 めっきできるものを分類するには、まず、

金属が含まれた元素 または 元素の組み合わせ

が前提となります。次にこれまでにお話してきた

1.電気めっきできる元素
2.無電解めっきできる元素
3.合金でめっきできる元素

に分けることができます。動画をご覧いただくとわかる通り、めっきの仲間となる元素は意外と多いですね。

めっきの仲間をご紹介

前勉強はこれくらいにして、では、めっきの代表的な仲間たちを紹介しましょう!

  • 安定+美しさでNo.1!:金めっき安定+美しさでNo.1!:金めっき
    貴金属の代表選手である金は、最初にお話したように最もイオン化しにくく、大気中で安定した金属です。まさに、普遍の価値を象徴する存在。
    金めっきはその役割も利用範囲が広く、有用な物質で、電子機器や高級な端子・コネクタなどにも多く利用されています。
    役割:装飾 防錆 電気特性 はんだ付け性
  • 抗菌作用も利用される鏡面加工の代表選手!:銀めっき抗菌作用も利用される鏡面加工の代表選手!:銀めっき
    銀は見た目の美しさだけでなく、抗菌作用があるので、食器など手の触れる場所に多く使われています。
    また、電気抵抗が低いので、コネクタや電気的接点などにも銀めっきが使用されています。現在でも、鏡には銀めっきの技術が使われているほど、光の反射に関しては最も利用されています。
    役割:装飾 抗菌特性 電気特性 光学特性
  • 電気関連でおなじみ!:銅めっき電気関連でおなじみ!:銅めっき
    銅は高伝導性(電流が流れやすいという性質)があり、プリント基板などの電気配線関連でよく使用されています。貴金属の中では比較的安価な金属であり、比較的容易にめっきもできることから下地めっきとしてもよく利用され、金めっきの代役としても活用されています。
    また、調理器具にも使用されているように、銅は熱伝導性が良いことも特長です。
    役割:電気特性 熱特性 研磨性
  • 古くから使用されているめっきの最古参!:すずめっき古くから使用されているめっきの最古参!:すずめっき
    すず(錫)めっきは、防錆(さびを防ぐ)目的で古くから使用されてきていました。現代でも電子部品の接続部分などに、よく使用されています。
    人体への影響が少ないことから、缶詰の内面処理など食品関連にも多く使用されています。
    役割:防錆 装飾 はんだ付け性
  • めっき界の万能選手!:ニッケルめっきめっき界の万能選手!:ニッケルめっき
    ニッケルは合金でさまざまな特長をもつので、めっき界のオールラウンダー的存在です。
    表面に硬さを持たせる、平らで抵抗の少ない表面にする、電子機器の磁力の影響に対応する、見た目を考慮する…など、多種多様な用途があります。
    役割:精密特性 硬度 耐磨耗性 光学特性 耐熱特性 磁気特性 防錆
  • 耐久性バツグン!:クロムめっき耐久性バツグン!:クロムめっき
    クロムめっきは防錆や装飾目的で多く使用されており、かつてのイメージと違う環境負荷を軽減した3価クロムめっきもあります。硬い表面が利用され、シャフト、バルブ、ピストンリング、軸受などによく活用されています。非粘着性を利用して、金型に使用される場合もあります。
    役割:防錆 装飾 硬度 耐磨耗性
  • ローコストが魅力!:亜鉛めっきローコストが魅力!:亜鉛めっき
    一般的に「どぶ漬けめっき」と呼ばれる溶融めっきに代表されるように、古くから防錆めっきとして使用されてきました。鉄への安価な防錆として、現在でも大型構造物、ボルト、ナット、架線金物に対して使用されています。
    役割:防錆 装飾
  • 特別な性能をもつ物質とのコラボレーション!:複合めっき特別な性能をもつ物質とのコラボレーション!:複合めっき
    複合めっきは、金属以外のものを共析することで、多様な特性を発揮するめっきです。例えば、ニッケルにPTFE(ポリテトラフルオロエチレン:フッ素と炭素からなる樹脂)を共析することで、表面の摩擦を大きく下げることができ、撥水や機械部品の円滑な動きに利用することができます。
    役割:潤滑特性 撥水性 離型性

種類も用途も多種多様なめっき。その可能性はさらに広がっています!

今回ご紹介しためっきの仲間は代表選手で、実際の種類はさらにたくさんあります。使用する金属により、さまざまな特長で私たちの生活の中で活躍しています。
とは言っても、めっきの多種多様な用途のすべてを利用できているわけではありません。用途開発の余地はまだまだあるでしょうし、金属の組み合わせや使用する場所により新たな世界が広がるかもしれません。

今後も、めっきの世界から新たな技術が生まれてゆくことでしょう。