第2話:「めっき」のウンチク

「めっき」の語源

塗金から滅金、鍍金、めっきへ。長い歴史で名前も移り変わりました。

水銀に他の金属(特に金)を混ぜ合わせ溶かし込み、それを表面に塗った後、熱によって水銀を蒸発させる ―― これが古くから利用されてきた「めっき」の方法で、「塗金」(ときん)と呼んでいました(現在の「アマルガム法」にあたります)。水銀に金を溶かし込むと金色が無くなり水銀の銀色になります。その不思議な現象で「金が滅する」という意味から「滅金 (めつきん)」と呼ばれるようになり、「鍍金(めっき)」へと変化しました。
「鍍金」の「鍍」の漢字が常用漢字で無いことから、新聞などの表記では「めっき」や「メッキ」が使われるようになりました。読みやすさなどから「メッキ」が使われることも多いですが、「めっき」は歴史ある日本語です。JIS規格では「めっき」が正式な表記方法になっています。

「めっき」の歴史

起源はなんと3500年前!

「めっき」の起源は古く、紀元前1500年ごろに、メソポタミア北部(現在のイラク)のアッシリアで、金属の腐食の防止のために錫(すず)めっきが行われていたようです。紀元前700年ごろには、東ヨーロッパの遊牧民族で「アマルガム法」で青銅に「金めっき」が行われていました。中国では、紀元前500年ごろに青銅器に「金めっき」を施したという記録が残っています。

画期的な「電気めっき」の登場!

長い歴史のなかで、大きな転換点になったのが、「電気めっき」(電解めっき)の登場です。

イタリアの物理学者・ボルタが1800年に考案したボルタ電池によって、人類は電気を実用化できるようなりました。この功績により、ボルタの名前は電圧(英語ではvoltage)と電圧(電位差)の単位ボルト(volt)に残されています。

電池の誕生から5年後、1805年に「電気めっき」が発明されました。「電気めっき」の登場で、さまざまな金属のめっき法が開発され、用途もこれまで防錆、装飾から格段に増えることになりました。安定した発電のできる発電機が開発されると、機械部品などの量産に対応できるようになり、「めっき」の利用範囲がさらに広がることになりました。

「化学めっき」の始まりは、鏡から!

「化学めっき」(無電解めっき)の始まりは、1835年にドイツで開発されたガラス面に銀を析出させる銀鏡反応が最初とされています。鏡は、現在でも基本的に同じ手法により作られていますから、毎朝見るもっとも身近なところに「化学めっき」の歴史が刻まれているんですね。

20世紀初頭になると銅が銀(鏡反応)と同様の方法が使われるようになりました。そして、現在の最も代表的な「化学めっき」である「無電解ニッケル」は、1946年ごろにアメリカで発明されました。

日本の「めっき」

仏教と一緒に伝来!

日本では、古墳時代後期の700年ごろ、大陸から仏教と共に「めっき」技術が伝来し、馬具などに「めっき」が施されるようになりました。以降、仏像や装飾品、刀剣などに使用されるようになりました。もちろん、このころの「めっき」は、水銀を利用したアマルガム法によるものでした。

一方、「電気めっき」は、時代がずっと下がって江戸時代の幕末、薩摩藩藩主の島津斉彬が鎧兜の装飾用として利用したのが最初と言われています。

東大寺大仏の輝きは「めっき」の賜物!

752年に完成した東大寺の大仏(盧舎那仏像)は、当時の最先端技術である「めっき」が大活躍しました。高さ15メートルの巨大な仏像は、全体を8分割し段階的に銅で鋳造し、全体像が完成した後に表面に金の「めっき」を行っています。金めっきの方法は、金と水銀を混合しアマルガム状にしたものを表面に塗り、炭火で加熱し水銀を蒸発させ、金のみを残す方法がとられました。巨大な大仏像全体に金めっきをするのに要した期間は、なんと5年!

黄金に輝く大仏像を目にした当時の人々は、どんなに驚いたことでしょう。日本に仏教が根付いた背景には、「めっき」の役割も大きかったのですね。

「めっき」のことわざ

「めっきが剥がれる」

「隠れていた本当の姿が現れる」という同じ意味で使われます。昔の「めっき」は、剥がれやすかったために、こんなことわざができたようです。しかし、現在の「めっき」は剥がれにくくなっていますので、なかなか本当の姿が現れないことになりますね。現代風に意味を解釈するなら「めったに起こらないことが起こった」になるのでしょうか?

「真金は鍍せず」

本物の金であれば「めっき」する必要が無い。すなわち、本当に実力があれば外見を飾る必要が無い、という意味です。

確かに「金」に「金めっき」するのは意味がありませんが、現代ではさまざま「機能めっき」があり、「めっき」をすることで、元々の素材の用途を広げ、価値を高めています。「めっきに無駄なし」という新しいことわざができるかもしれませんね。

現代の「めっき」は、見た目だけでなく、中身でも勝負!

ことわざに出てくるように、かつての「めっき」の用途は、見た目の美しさを利用する「装飾めっき」がほとんどでした。

もちろん、現代でも装飾美、腐食防止としても数多くの場面で利用されていますが、その真価は、「機能めっき」で発揮されています。「めっき」は見た目以上に、いろいろな中身(機能)で活躍しているのです。新たなことわざが作られるとしたら、全く違うイメージで使用されることになるでしょう。