24Crクロムめっき
鏡面光沢を示し、高い硬度、優れた耐食性、耐摩耗性、離型性を有し、装飾用、工業用に広く用いられる。
色調と硬さに特長のあるクロムめっきは、装飾用途の装飾クロムめっきと工業用途の硬質クロムめっきに分類されますが、その違いは皮膜の厚さのみで、めっき条件や皮膜自体は基本的に同じです。
装飾クロムめっきは、通常、光沢ニッケルめっき上に0.1~0.5µmの厚さで施され、二輪車の車体、自動車外装部品(エンブレムやラジエーターグリル、ドアハンドル)、時計枠、医療機器部品、水洗金具などに適用されます。
硬質クロムめっきは、クロムめっきの硬さと耐摩耗性を利用するもので、厚さは1µm以上、厚いものではmmオーダーに達するものまであります。用途としては、自動車や船舶、航空機のエンジン部品など耐摩耗性を必要とする各種部品をはじめ、プラスチックやガラス、粉末治金などの成型用金型、印刷や製紙、圧延、フィルム加工、製鉄におけるローラー類などに用いられます。
クロムめっき浴における主成分である無水クロム酸は、発がん性がある六価クロム化合物であることから、毒性の低い三価クロム塩からなる三価クロムめっき浴の開発が期待されており、装飾用では実用化されているものの、工業用については、まだ研究段階です。
金属の物理化学的性質
原子量 | 51.9961±6 |
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融点(℃) | 1857 |
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密度ρ(20℃)(g cm-3) | 7.19 |
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硬度(Hv) | 130 |
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線膨張率α(10-4K-1) | 0.084 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 12.9 |
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伸び(%) | 44 |
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抗張力(MPa) | 412 |
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過電圧 | 水素(V) | – |
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酸素(V) | – |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅵ:0.0007 (効率13%) |
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厚さ(µm) | Ⅵ:0.0097 (効率13%) |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | Ⅱ:-0.90 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)
28Niニッケルめっき
優れた耐食性や防食性に加えて、一般素材への付きまわりの良さ等が長所。
下地めっきとして、装飾から電子部品分野まで幅広く用いられる。
電気ニッケルめっきには、ワット浴、ウッド浴、スルファミン酸浴などの種類があります。ワット浴は、各種光沢剤の有無などにより、装飾めっき、機能めっきとして最も広い用途があります。ウッド浴は、ステンレス鋼などの難めっき素材用のストライク浴として用いられます。スルファミン酸浴は、高速で低い電着応力が求められる電鋳や、一部の電子部品分野で用いられています。電気ニッケルめっきは組成や使用条件等で様々な特徴を持つ皮膜が得られるため、今後も各分野における重要性は変わらないでしょう。
無電解ニッケルめっきは、他の無電解めっきに比べると使用可能な錯化剤や添加剤の種類が多く、めっき反応可能なpH領域も広いため、多くの浴種があります。産業上利用されているのは、主に無電解Ni-P(ニッケル-リン)浴と無電解Ni-B(ニッケル-ボロン)浴に大別されます。無電解ニッケルめっき皮膜には、機械的特性、化学的特性、光学的特性、熱的特性などに様々な機能があるため、多くの産業で幅広く使用されており、各分野での新旧ニーズに対して、今後ともその役割が大いに期待されています。
金属の物理化学的性質
原子量 | 58.6934±2 |
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融点(℃) | 1453 |
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密度ρ(20℃)(g cm-3) | 8.908 |
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硬度(Hv) | 60 |
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線膨張率α(10-4K-1) | 0.125 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 6.84 |
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伸び(%) | 30 |
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抗張力(MPa) | 316 |
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過電圧 | 水素(V) | 0.21 |
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酸素(V) | 0.06 |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅱ:0.0182 |
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厚さ(µm) | Ⅱ:0.2048 |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | -0.257 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)
29Cu銅めっき
電気伝導性や熱伝導性、延性及び耐食性が良好である特長を活かして、下地めっきやプリント配線板などの電子部品に使用される。
銅は、電気伝導性、熱伝導性、延性、及び耐食性に優れた金属であることから、装飾めっきの下地めっき、プリント配線板のスルーホールめっき、印刷機のローラーへの厚付けめっき、浸炭防止用めっき、電解銅箔、電鋳などに広く用いられています。
主な電気銅めっきとしては、硫酸銅浴、シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴などが挙げられます。現在の主流である硫酸銅浴は、優れたレベリング作用(平滑作用)を持つことが特長で、得られる皮膜は高延性を示すことから、温度変化に伴う素材の伸縮によるクラック(ひび割れ)の発生を防ぐことができます。しかし、強酸性の硫酸銅めっき浴では、置換反応により直接鉄鋼や亜鉛ダイカスト素材上にめっきできないため、これらの材料にはあらかじめシアン化銅浴でストライクめっき(密着性確保または完全被覆のための予備めっき)をする必要があります。
無電解銅めっきは、銅の高い電気伝導性を活かし、プリント配線板におけるスルーホール用あるいは厚付け用めっきとして広く用いられており、電子部品をはじめ、様々な産業分野において必要不可欠な技術となっています。
金属の物理化学的性質
原子量 | 63.546±3 |
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融点(℃) | 1083.4 |
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密度ρ(20℃)(g cm-3) | 8.96 |
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硬度(HRB) | 40 |
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線膨張率α(10-4K-1) | 0.162 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 1.6730 |
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伸び(%) | 50 |
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抗張力(MPa) | 213 |
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過電圧 | 水素(V) | 0.23 |
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酸素(V) | – |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅰ:0.0395 Ⅱ:0.0198 |
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厚さ(µm) | Ⅰ:0.4410 Ⅱ:0.2205 |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | Ⅰ:0.520 Ⅱ:0.340 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)
30 Zn 亜鉛めっき
鉄に対して優れた犠牲防食作用を有することから、鉄製工業製品の防錆(防食)に使用される。
亜鉛めっきは、安価で、鉄に対して優れた犠牲防食作用(皮膜自らが優先的に溶解することによって鉄を防食する作用)を有することでよく知られており、自動車、船舶、電子機器の外装部品、処理鋼板、筐体、機械や建材部品などの鉄製工業製品の防錆(防食)に幅広く使用されています。
亜鉛めっき浴は、アルカリ浴と酸性浴に大別され、工業的にはアルカリ浴が半数以上を占めます。アルカリ浴にはシアン化物浴、ジンケート浴など、酸性浴には塩化浴、硫酸浴などが挙げられますが、環境問題からシアン化物浴の使用は減少する一方で、ジンケート浴及び塩化浴の適用が増加しています。
北米や北欧では、冬季の路上凍結防止に使用された岩塩散布量の増加に伴う自動車の腐食が社会問題となり、自動車工業において自動車の塩害対策が強く求められてきました。その結果、純亜鉛めっきよりも耐食性に優れるZn-Sn(亜鉛-すず)、Zn-Ni(亜鉛-ニッケル)、Zn-Fe(亜鉛-鉄)、Zn-Co(亜鉛-コバルト)などの亜鉛合金めっきが開発され、耐熱性が要求されるエンジン付近の部品や車体の下回りの部品に適用されています。
金属の物理化学的性質
原子量 | 65.39±2 |
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融点(℃) | 419.58 |
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密度ρ(25℃)(g cm-3) | 7.133 |
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硬度(HB) | 45 |
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線膨張率α(10-4K-1) | //C軸 0.530
⊥C軸 0.150 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 5.916 |
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伸び(%) | 55 |
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抗張力(MPa) | 118 |
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過電圧 | 水素(V) | 0.70 |
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酸素(V) | – |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅱ:0.0203 |
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厚さ(µm) | Ⅱ:0.2850 |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | -0.7626 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)
47 Ag 銀めっき
電気抵抗が低く、熱伝導率に優れ、高い反射率を有している。電気電子部品や光学部品、電磁波シールドや滅菌コートなどの分野で用いられる。
銀は金属の中でも電気抵抗が低く、熱伝導率に優れており、高い反射率を有する特徴があることから、電気電子部品や光学部品、その他電磁波シールドや滅菌コートなど多くの分野で用いられています。その中でもLEDは、薄型化、省電力化に伴い、スマートフォンやデジタルカメラなどの電子機器の操作パネル照明や、液晶ディスプレイのバックライトなどへの展開が急速に進んでいます。
また、LEDデバイスにおいて、高出力、高発光効率、高機能化などの市場要求が拡大しており、パッケージ設計に要求される項目が多岐にわたるようになってきました。LEDパッケージは、素子からの光を全面に効率的に反射できることが重要で、LEDの発光波長域で高い反射率が要求されており、そのため銀の高い反射率特性を利用するために電気銀めっきが利用されています。
一方、独立したパターンに対しても無電解銀めっきプロセスの要求が出てきており、各種電子部品への無電解銀めっきの適用が大きく期待されています。
金属の物理化学的性質
原子量 | 107.8682±2 |
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融点(℃) | 961.93 |
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密度ρ(20℃)(g cm-3) | 10.50 |
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硬度(Hv) | 26 |
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線膨張率α(10-4K-1) | 0.193 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 1.59 |
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伸び(%) | 48 |
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抗張力(MPa) | 124 |
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過電圧 | 水素(V) | 0.15 |
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酸素(V) | 0.41 |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅰ:0.067 |
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厚さ(µm) | Ⅰ:0.6387 |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | 0.7991 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)
50 Sn すずめっき
融点が低く、はんだ付け性に優れ、電子部品、半導体部品、機械部品の接続信頼性を高める。
すずやすず合金めっきは、はんだ付け性に優れることから、半導体リードフレームのアウターリード、コネクタ(フープ材、ピン材等)、チップ部品(抵抗、コンデンサ、インダクタ)、フレキシブル基板(FPC、FFC)、水晶振動子、コイルケース等の電子部品や基板に使用され、はんだ付けによる接続技術の信頼性を高め、電子機器そのものの信頼性をも左右する技術となっています。
電気すずめっきは、大きく強酸性浴(硫酸浴、有機スルホン酸浴)、中性浴、アルカリ浴に分類され、電子部品用では主に有機スルホン酸浴、中性浴が使用されています。
電気すず合金めっきは、すずめっきに比べてはんだ濡れ性に優れ、かつ、すずめっきに特有のウィスカ(皮膜上に発生するすずの単結晶)の発生を防止や融点の制御を目的として、Snへ添加金属(Ag,Cu,Bi等)を入れためっきが広く使用されています。
無電解すずめっきは、銅回路表面の酸化を防止し、はんだ付け性能を維持させる目的で、プリント配線板へのめっきに使用されています。
金属の物理化学的性質
原子量 | 118.710±7 |
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融点(℃) | 231.9681 |
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密度ρ(20℃)(g cm-3) | 7.27 |
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硬度(HB) | 5.3 |
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線膨張率α(10-4K-1) | //C軸 0.2899 ⊥C軸 0.1583 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 11.0 |
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伸び(%) | 96 |
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抗張力(MPa) | 16.7 |
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過電圧 | 水素(V) | 0.53 |
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酸素(V) | – |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅱ:0.0379 Ⅲ:0.0246 |
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厚さ(µm) | Ⅱ:0.5207 Ⅲ:0.3384 |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | Ⅱ:-0.1375 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)
79 Au 金めっき
見た目の美しさから装飾用に用いられるが、耐食性に優れ電気特性にも特長がある。電子部品や他のめっき皮膜の腐食防止層として利用される。
金めっきは、装飾用途だけでなく、電子部品用途の電気接点材料として広く利用されています。接合方式は、接触式、はんだ接合、ワイヤボンディングに大別されます。
接触式としては、硬質電気金めっき皮膜を用いたSDカードや携帯機器電池などの接点に活用されています。はんだ接合は、マザーボードへの各種部品実装やパッケージ部品のBGA(Ball Grid Array)実装などに幅広く用いられますが、はんだ濡れ性が良好であることや十分な接合強度が得られることが非常に重要となります。
ICチップと基板への接続はワイヤボンディングやはんだにより接合されています。特にワイヤボンディングに関しては、近年、金ワイヤだけでなく銅ワイヤ等も使用されており、これらに適した金めっき膜が求められています。
従来は、電気金めっきが広く使用されてきましたが、部品の小型細線化や内層銅配線パターンの複雑化により、無電解金めっきを用いる必要性も高まっています。
金属の物理化学的性質
原子量 | 196.96654±3 |
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融点(℃) | 1064.43 |
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密度ρ(20℃)(g cm-3) | 19.32 |
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硬度(HB) | 25 |
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線膨張率α(10-4K-1) | 0.1424 |
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電気抵抗ρ(10-6Ωcm) | 2.35 |
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伸び(%) | 45 |
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抗張力(MPa) | 130 |
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過電圧 | 水素(V) | 0.02 |
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酸素(V) | 0.53 |
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析出量(1A/dm2×1分) | 重量(g/dm2) | Ⅰ:0.122 |
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厚さ(µm) | Ⅰ:0.6339 |
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標準電極電位E°(25℃)(V) | 1.83 |
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引用文献:表面技術便覧 初版(表面技術協会、1998年発行)
化学便覧 基礎編 改訂4版(日本化学会、1993年発行)