「めっき」とハイテク製品は、実は相思相愛!?
「めっき」というと、「昔はよく聞いたけれど、最近は聞かないな」という方は多いかもしれません。
「どこで使われているの?」と言われる方に、そっとお教えしますと、いまご覧になっているスマホやパソコン、そこにあります。
そう、現代の「めっき」は、電子部品や通信機器、機械部品など、先端産業に数多く使用されている技術です。製品の中身に使われているものが多いので目に触れることが少ないですが、みなさんのごく身近に「めっき」の技術が使われています。実は、「めっき」とハイテク製品は相思相愛の仲なんですね。
では、「めっき」が使われている代表的な製品をご紹介しましょう。
スマートフォン・タブレット
- 今や、生活になくてはならない存在になっている「スマートフォン」や「タブレット」。この身近な情報端末にも、数多くの「めっき」技術が使われています。機器内部で使われている電子部品やプリント基板(あらゆる電子部品を固定し、つなぎ合わせるために電気回路が組み込まれた板状の部品)の多くが、「めっき」の技術により作り出されています。
パーソナルコンピュータ
- 仕事はもちろん、家庭でも広く使われているパソコンも、数々の「めっき」技術によって成り立っています。「パソコン」内のプリント基板やデータを記憶するハードディスク、外部機器との接続を行うコネクタ、そして筐体(パソコン本体の箱)にも「めっき」が使われています。
自動車
- 最もポピュラーな移動手段の自動車にも多くの「めっき」が使われています。
現在の自動車はたくさんの電子制御が使われ、そこにはプリント基板や電子機器が利用されています。また、機械部品は「めっき」をすることで、表面の強度や潤滑性を高めています。そして、外観ではエンブレムやグリルなどに「めっき」が使われ、金属色の輝きや軽量化、腐食防止などに活用されています。
アクセサリー
- 貴金属を「めっき」することで、見た目の美しさをグレードアップしています。
また、プラスチックなどに「めっき」することで、金属のみのものに比べ、重量を軽減し、手軽に利用できるものになります。
さらに、アクセサリーは直接肌に触れるものですので、アレルギー対策や抗菌作用の効果などにも利用されています。
どうして「めっき」が利用されるのでしょう?
「めっき」が使われるのには、さまざまな理由があります。なかでも大きな理由として「さびの防止」「見た目の良さ」「機能・性能」の3つが挙げられます。
さびの防止
- 私たちの生活で、最も使用されている金属は「鉄」です。ただ、鉄は空気に触れると酸化し、そのままの状態では必ず「さび」が発生します。「めっき」で鉄の表面を覆うことで酸化することを防ぎ、さびを防止します。
見た目の良さ
- 「めっき」で表面のみに貴金属の膜を作ることで、貴金属の見た目の美しさを向上させ、その価値を高めます。
機能・性能
- めっき金属には「電気を通す」「表面を硬くする」「磁化する・磁化しない」「光を反射する・反射しない」などの特長があります。
「めっき」の種類、あれこれ
「めっき」には、さまざまな方法・手法があります。どんな材料に「めっき」するのか、どこに「めっき」するのか、など、用途や求められる機能によって、「めっき」の種類は変わってくるのです。
その種類は、まず「湿式めっき」と「乾式めっき」の2つに分けることができます。「湿式めっき」は、液体中に物を入れてめっきを行い、「乾式めっき」は真空の状態で金属を作る方法です。
さらに、「湿式めっき」は「電気(電解)めっき」と「無電解(化学)めっき」の大きく2種類の方法に分けられます。「電気(電解)めっき」は電気の力、「無電解(化学)めっき」は化学の力を利用する「めっき」です。
湿式めっきとは…
めっき液に物を入れることでめっきする方法。めっき液内の金属成分が、物の表面に金属膜を作る方法。
- 電気(電解)めっき
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電気の力でめっきをする方法。電気を流すことで、+極より(あるいは浴中の)金属イオンが-極に移動し、金属の膜ができる。
- 無電解(化学)めっき
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化学の力を利用してめっきする方法です。化学反応で発生した表面の電子に金属イオンが移動し膜ができる。
乾式めっきとは…
めっき液を使用せずに、温度を上昇させ、気化した金属で膜を作る方法。
- PVD(物理蒸着)
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真空状態の空間でめっきする方法。真空の状態で金属を加熱し、蒸発した金属が物の表面に金属膜を作る。
- CVD(化学蒸着)
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めっきされる物やめっき空間の温度を上昇させめっきする方法。低真空の状態にガス化した金属を注入することで、化学反応を起こし金属膜ができる。
もともとは、鉄がさびることを防止したり、見た目を美しくするために使われていた「めっき」ですが、現在では、最先端のものづくりに欠かすことのできない技術になりました。現代のものづくりのキーテクノロジーとなった「めっき」について、第2話以降では実例を交えながらお話してまいりますので、ぜひご期待ください!
