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    めっきの用途と歴史

    めっきは、長い歴史がありながら、現代の最先端のものづくりを支えているという、
    とってもユニークな技術です。
    今回は、めっきの用途と歴史についてご紹介します。

    めっきはどこに使われているのか?

    「めっき」を辞書で引くと、「金属の薄層を他の物(主として金属)の表面にかぶせること。また、その方法を用いたもの」(広辞苑第七版)と書かれている通り、めっきは、素材の表面に金属の薄い膜を形成し、様々な機能性や装飾性を与える技術です。

    広義のめっきには、真空技術を応用した乾式めっきや溶融塩による溶融めっきも含まれますが、ここでは、水溶液による湿式めっきを対象にめっきの技術をご紹介します。(めっきの種類については、第2話で詳しくご紹介します。)

    現代のめっきは、自動車、パソコン、携帯端末、家電製品など、身の回りの様々な製品に使われています。製品の中身に使われているものが多いので、直接目に触れる機会は少ないですが、みなさんのごく身近にめっきの技術が活用されています。
    それでは、めっきが使われている代表的な製品をご紹介しましょう。

    モバイル端末

    今や生活になくてはならない存在になっているスマートフォンやタブレット端末。こうした身近な通信機器にも、数多くのめっき技術が使われています。機器内部で使われている半導体や電子部品の多くに、めっきの技術が活用されています。

    コンピュータ

    家庭用や業務用で使われるパソコンやサーバーも数々のめっき技術によって成り立っています。機器内部のCPU、GPU及び電子回路基板やデータを保存するハードディスクドライブ、外部機器との接続を行うコネクタにもめっきが使われています。

    自動車

    自動車にも数多くのめっきが使われています。近年の自動車は、電気を動力源として使う電動化やADASのように運転を制御する自動化の進展によって、車載用電子部品の搭載が飛躍的に増加しています。また、機械部品はめっきをすることで、表面の強度や潤滑性を高めています。そして、外観ではエンブレムやフロントグリルなどにめっきが使われ、金属色の輝きや軽量化、腐食防止などに活用されています。

    アクセサリー

    金や銀などの貴金属をめっきすることによって、見た目に美しい金属光沢を与えています。
    また、成形加工しやすいプラスチックにめっきすることで、金属そのものを利用するよりも軽量化やコスト低減につながるだけでなく、射出成形を施して、より複雑なデザインを実現することができます。

    めっきはいつ頃から使われているのか?

    めっきの起源は古く、紀元前1500年ごろに、メソポタミア北部(現在のイラク)のアッシリアで、金属の腐食の防止のためにすずめっきが行われていたようです。紀元前700年ごろには、東ヨーロッパの遊牧民族が、アマルガム法によって青銅に金めっきを行っていました。中国では、紀元前500年ごろに青銅器に金めっきを施したという記録が残っています。

    長い歴史のなかで、大きな転換点になったのが、電解めっき(電気めっき)の登場です。

    イタリアの物理学者・ボルタが1800年に考案したボルタ電池によって、人類は電気を実用化できるようなりました。この功績により、ボルタの名前は電圧(英語ではvoltage)と電圧の単位ボルト(volt)に残されています。

    ボルタ電池

    電池の誕生から5年後、1805年に電解めっきが発明されました。電解めっきの登場によって、様々な金属のめっき法が開発され、用途もそれまでの防錆、装飾から格段に増えることになりました。安定した発電のできる発電機が開発されると、機械部品などの量産に対応できるようになり、めっきの利用範囲がさらに広がることになりました。

    無電解めっき(化学めっき)の始まりは、1835年にドイツで開発されたガラス面に銀を析出させる銀鏡反応が最初とされています。鏡は、現在でも基本的に同じ手法によって作られており、毎朝見る最も身近なところに無電解めっきの歴史が刻まれていることになります。

    20世紀初頭になると銅めっきが銀めっき(鏡反応)と同様の方法で使われるようになりました。そして、現在の最も代表的な無電解めっきである無電解ニッケルめっきは、1946年ごろにアメリカで発明されました。

    日本では、古墳時代後期の700年ごろ、大陸から仏教と共にめっき技術が伝来し、馬具などにめっきが施されるようになりました。以降、仏像や装飾品、刀剣などに使用されるようになりましたが、このころのめっきは、水銀を利用したアマルガム法によるものでした。

    時代がずっと下がって江戸時代の末期、薩摩藩藩主の島津斉彬が鎧兜の装飾用に金、銀めっきを施したのが日本初の電解めっきと言われています。明治期には、電解めっきの普及が進み、戦後、めっき対象はプラスチック、セラミックスなど金属以外にも広がっていきました。

    今回は、めっきの用途と歴史についてご紹介しました。
    みなさんの身近なところでめっきの技術が活躍していることが
    お分かりいただけたかと思います。
    特にめっきはハイテク製品にとって不可欠な技術であり、
    これからもめっきの活躍の場は増えていくことでしょう。

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