10864200100200300400500600(b)1200100080060040020000102030405060(a): 60rpm: 120rpm: 240rpmHydrogen evolution content (vol.ppm)Time(t/min)Temperature(℃)99%Al600℃/hFriction time:1hH2 desorption rate (massppb/min): uncharged: 60rpm: 120rpm: 240rpm水中摩擦の場合と同様にアルゴンを一定流速(20mL/min)で流しながら、発生した水素とアルゴンの混合ガスをSGCのカラムで分離する。水素の計測は最短で2minごとの間隔で行うことが可能である。図5に対応するSGCを利用して計測したアルミニウム(99%)表面からの水素発生の分析とアルミニウム中へ吸蔵された水素の昇温脱離分析の結果24)を図6に示す。水中でアルミニウム表面を摩擦すると、表面の酸化膜が除去されることで活性な新生面を持つアルミニウムと水が反応することで、多量の水素が発生することがわかる〔図6(a)〕。また、水中摩擦後のアルミニウムを昇温することで、いずれの温度でも放出水素量が増加しており、摩擦なしの場合には観察されなかった水素脱離ピークが100℃と400℃付近に発生することも明らかにされている〔図6(b)〕。このことは、アルミニウム中に吸蔵された水素が、材料内部で異なる2種類の水素捕捉サイトに存在されていることを示唆している。8おわりに本格的な水素社会を実現するために、水素環境に置かれた構造金属材料の安全性を保証することが求められる。そのためにも、本稿で紹介した様々な水素分析手法を高精度化するとともに、特に水素脆化の評価においては、変形や破壊といった動的現象での水素分析技術の開発が、今後ますます重要になると考えられる。著者は、実際の使用環境(大気圧)で生じる水素脆化を模擬しながら、脆性破壊時に放出される水素を定量検出できる新たなシステムを最近開発25)しており、今後、そのシステムを活用して耐水素脆性特性に優れる材料開発に繋げたいと考えている。参考文献1)高野俊夫,水素利用技術集成製造・貯蔵エネルギー利用,エヌティエス,260(2003).2)堀川敬太郎,軽金属,60,542(2010).3)太田健一郎,佐藤登,燃料電池自動車の材料技術,シーエムシー出版(2007).4)南雲道彦著,水素脆性の基礎,内田老鶴圃,186(2008).5)深井有,田中一英,内田裕久,水素と金属,内田老鶴圃,115(2008).6)山崎真吾,高橋稔彦,遅れ破壊解明の新展開,日本鉄鋼協会,66(1997).7)櫛田隆弘,材料と環境,49,195(2000).8)K.Ichitani,S.Kuramoto,M.Kanno,Corros.Sci.,45,1227(2003).9)高井健一,日本金属学会誌,60,1155(1996).10)上田一之,真空,42,892(1999).11)G.Razzinietal.,Corros.Sci.,37,1131(1995).12)H.Saito,T.Ohnishi,J.Mater.Sci.Lett.,14,417(1995).13)T.Schober,C.Dieker,Met.Mater.Trans.A.,14,2440(1983).14)J.OvejeroGarcia,J.Mater.Sci.,20,2623(1985).15)K.Horikawaetal.,Mater.Trans.,59,2201(2009).16)菅野幹宏,岡田浩,伊藤吾朗,日本金属学会誌,59,296(1995).17)堀川敬太郎,外薗俊輔,小林秀敏,軽金属,66,77(2016).図6SGCを用いたアルミニウム表面からの水素放出の測定例24)(a)水中摩擦時の発生水素,(b)昇温時の脱離水素8
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