テクニカルレポート79
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スとしてガスクロマトグラフィーで検出する場合をTDA(ThermalDesorptionAnalysis)として呼ばれることが多い。TDSは超高真空の水素分圧を低減することによって0.01molppmオーダーの水素の検出が可能である。TDAでは、水素検出素子として、熱伝導度検出器(ThermalConductivityDetector:TCD)を使用する場合と、半導体水素センサー(SensorGasChromatography:SGC)を利用する場合とがある。TCDと比べてSGCのほうが高感度とされており、0.001molppmオーダーの水素の検出が可能である。3.2電気化学的水素透過法7,8)カソード槽、アノード槽と呼ばれる2つの槽の間に板状の試験片を挟み、試験片の厚さ方向の水素透過によるイオン化反応(H→H++e)で発生するアノード電流を測定し、水素量に変換する手法。水素原子のイオン化反応を効率よく行うためにアノード表面にパラジウムめっきやニッケルめっきが施される。水素透過電流の情報をもとに水素濃度の定量とともに、水素拡散係数を決定することもできる。4材料表面組織での水素分析法材料表面組織から放出される水素の分析方法として、(1)質量分析法、(2)ガスクロマトグラフィー、(3)H→H++eの反応による電子を電流値として検出する方法、(4)水素の同位体であるトリチウム(3H)を利用して、トリチウムから放出されるβ線(電子)を捉える手法、(5)Ag++H→H+Ag+など、水素との間の化学反応を利用して水素を検出する手法、などがある。材料表面の局所的な水素量を評価できる代表的な方法には、次の4.1~4.6項のようなものがある。表1にそれらの局所水素分析法の分解能、感度、定量性をまとめる。4.1二次イオン質量分析法(SecondaryIonMassSpectrometry:SIMS)9)材料に照射された一次イオンが固体中の原子と衝突を繰り返し、この衝突によって固体中の原子の一部が結合エネルギー以上の運動エネルギーを得て、中性のまま、あるいは電荷を持って表面から脱離し、その放出された原子を二次イオンとして質量分離する手法である。一次イオン源としてはCs+などが使用され、二次イオンとしてはH,Dを検出する。4.2電子誘起イオン脱離法(ElectronStimulatedDesorptionSpectroscopy:ESD)10)低速の電子で原子を励起して、そこに生じた電荷移動をもとに原子を真空中に取り出し、その脱離イオンを飛行時間法などを利用した質量分析で検出する方法。4.3走査型光電気化学顕微鏡法(Photoelectro-chemicalmethod:PEC)11)収束レーザーを試験片に照射して材料内部でH→H++eの反応を生じさせ、その照射部の水素量を電流として検出する手法。観察箇所の二次元的な走査観察により、水素量を画像化して識別できるのが特徴とされる。4.4トリチウムオートラジオグラフ法(TritiumAutoradiography:TAR)12)トリチウムを添加した試料表面に感光乳剤を被覆し、その乳剤をトリチウムの放射するβ線に露光させ、現像・定着処理を行うことによってトリチウムの存在位置を銀粒子として観察する手法。類似の手法として、感光乳剤の代わりにイメージングプレート(IP)を用いて、IP上での発光量からトリチウム量を求めるトリチウム・ルミノグラフ法もある。水素分析法分解能(μm)感度(molppm)定量性二次イオン質量分析法(SIMS)2ppb~ppmなし電子誘起イオン脱離法(ESD)1--走査型光電気化学顕微鏡法(PEC)10-ありトリチウムオートラジオグラフ法(TAR)0.1~101ppbあり銀デコレーション法(SD)0.1ppb~ppm困難水素マイクロプリント法(HMT)0.05ppb~ppmあり表1材料表面の水素分析法およびその分解能,感度,定量性4

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