1はじめにパソコンやスマートフォンに代表される電子機器は高機能化、高速処理化、小型化が進んでおり、それに伴ってパッケージ基板等のプリント配線板も、微細化、高密度化が要求されている1)。これらのプリント配線板を製造するにあたって回路形成を行うが、この工程には無電解銅めっきによるシード層(絶縁樹脂上に形成する薄い導電層)の形成が必要不可欠であり、無電解銅めっきを施す上で重要な技術が触媒付与工程である。一般にパッケージ基板では微細配線の形成に最も有利なセミアディティブ工程が多用されているが、絶縁樹脂上に直接無電解銅めっきを施すため回路形成後に樹脂上への触媒残渣が残りやすいという問題がある2)。したがって、パッケージ基板においては無電解銅めっきの触媒には従来のSn/Pd混合コロイドタイプと比較して触媒残渣が残りにくいアルカリ性のPdイオン錯体タイプが用いられている。しかし、配線の微細化に伴って、より低粗度形状の樹脂表面が求められており3)、表面粗さが小さくなることで単位面積当たりの触媒の吸着量を十分に確保することができなくなってきている。従来のプロセスでは、十分な無電解銅めっきを施すために、樹脂表面を触媒が吸着しやすい状態にコンディショニングするプレディップ処理が触媒付与工程前に行われている。しかし、プレディップ液に使用する成分は水洗により容易に除去されてしまうため、プレディップ工程後は水洗を介さず、直接次工程の触媒付与工程へと処理される。このため、プレディップ液の持ち込みにより触媒付与工程で用いられるアルカリ性Pdイオン錯体の不安定化が懸念される。本稿で紹介する酸洗添加剤アルカップⓇMCAは、上記のような問題を解決するため、従来用いられるプレディップ工程を不要とし、かつセミアディティブ工程において樹脂上およびスルーホールのガラスクロス上の触媒の吸着量を増加させることができる製品である。アルカップⓇMCAの適用により、従来のプロセスでは析出性の確保が困難であった低粗度形状の基材において、良好な析出性を得ることが可能となったので紹介する。2酸洗添加剤アルカップⓇMCAの概要アルカップⓇMCAを酸洗に添加することにより、従来のアルカップⓇプロセスの触媒付与工程におけるプレディップ工程が不要となり、プレディップ液が次工程の触媒付与工程で用いられるアクチベーター液に持ち込まれることを防止することが可能である。アルカップⓇMDPを用いた従来プロセスとアルカップⓇMCAを用いた新規プロセスの処理工程を表1に示す。新規プロセスでは無電解銅めっきの前処理の工数を削減でき、樹脂上およびスルーホールのガラスクロス上の触媒の吸着量は増加するが、銅上の触媒吸着量は少ないため高い接続信頼性が得られる。表2にアルカップⓇMCAの使用条件と管理範囲を示す。3アルカップⓇMCAを用いた新規プロセスと従来プロセスとの比較3.1密着強度アルカップⓇMCAを用いた新規プロセスの密着強度の評価を行った。評価基材にはABFGX92およびABFGX-T31〔味の素ファインテクノ(株)〕を用いた。めっき処理プロセスは表1に示した通りに行い、電気銅めっきはスルカップⓇETNを用いて25µmめっきした。また、平滑な基材表面とめっき皮膜の密着強度を評価するため、ピール強度の測定は基材の平均表面粗さ(Ra)が0.3µmとなるよう、デスミア条件を調整してアップデスⓇプロセスにより処理を行った。さらに、ピール強度の測定には島津製作所製AUTOGRAPHAGS-Xを用いた。Raの測定には酸洗添加剤「アルカップⓇMCA」を用いた微細配線対応無電解銅めっきプロセスの紹介中央研究所第2開発部清水良祐26
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