WHISKER実験試料黒色塗装×4台ExHAM2号機2年目と3年目の実験試料は引き続き曝露を実施し(図11)、2019年5月21日に約2年間の曝露が完了した(3年目の実験試料は引き続き曝露)。2年目の実験試料は、2019年7月26日に打ち上げられたSpaceXドラゴン補給船運用18号機(CRS-18)により地上に帰還しており、2020年初めまでに分析評価を完了する見込みである。8おわりに本計画は表1で示した通り全体で3年間の計画で進めている。地上および軌道上1年目時点の比較評価結果と、地上2年目の評価結果のまとめを以下に示した。①すずめっき浴に使用される添加剤の差でウィスカ発生状況に差が生じた。今回の軌道上環境試験では、地上環境と同様にすず結晶成長抑制剤を添加した浴からの皮膜ではウィスカは観察されなかったが、抑制剤無添加浴からの皮膜では多数観察された。また、下記のコート剤の試験には抑制剤無添加浴の皮膜が使用された。②軌道上におけるすずウィスカ成長の確認について、成長飽和の判断は2年目以降となるが、5節の通り、2年目以降も成長する可能性があることから注視が必要である。なお、軌道上におけるすずウィスカ成長の特異性は、現時点で、地上で想定されていたすずウィスカの発生要因だけでは説明することは困難な現象もあった。③コンフォーマルコーティングによるウィスカ抑制効果の軌道上実証について、想定通りの有効なデータが得られている。引き続き2年目以降の物性値の変化をモニターしていく。④地上におけるすずウィスカ成長は、1年目を超えるとウィスカ長の飽和が確認された。軌道上では長さ・太さ・形状・発生数等で大きな相違があり、軌道上長期運用の宇宙機における鉛フリー部品やすずウィスカへの対策(ウィスカ試験の必要性やコーティングの要求等)について本実証を踏まえた更なる検討を要する(ただし、ロケット等の運用期間が短く、地上保管が長い機器等の鉛フリー部品やすずウィスカへの対応は従来通りで問題はない)。最後に、鉛フリー部品はすずウィスカというリスクがあり、非修理系で長期間運用する人工衛星等への適用は困難であるが、すずウィスカの成長とその抑制対策に焦点を当てた軌道上での評価事例がないのが現状である。鉛フリー部品を止むを得ず適用せざるを得なくなった場合を想定し、3年間のWHISKER軌道上実証評価の最終結果においてすずウィスカのリスクを低減できる抑制対策の実証ができることに期待する。謝辞本軌道上実証を進めるに当たり、計画段階から様々な面でご支援、ご協力を頂きました鉛フリー部品対応検討会委員の大阪大学産業科学研究所所長の菅沼先生を始め、信頼性学会関西支部や、宇宙機メーカー・実装メーカー・部品メーカー・めっきメーカーの各委員の皆様、また分析データの取得にご協力頂いたコベルコ科研殿にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。参考文献1)中島健司,中川剛,山田雄二,島村宏之,錫ウィスカ抑制対策の軌道上実証評価(WHISKER)の検討,第60回宇宙科学技術連合講演会講演集,3F19JSASS-2016-4441.2)中島健司,中川剛,山田雄二,錫ウィスカ抑制対策の軌道上実証(WHISKER)実験開始一年目の評価状況,第62図11WHISKER実験試料の「きぼう」搭載位置UYEMURATECHNICALREPORTSNo.79.2020軌道上における鉛フリー部品のすずウィスカ実証評価(WHISKER)17
元のページ ../index.html#17