テクニカルレポート79
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約85μmウィスカの根元の割れなおすずウィスカの中に粒界はなく単一結晶である.初期軌道上1年目地上1年目表面EBSD断面EBSD結晶成長抑制剤【添加浴】試験片①すべてRolling Direction方向からの結晶方位Tin110110001初期軌道上1年目地上1年目結晶成長抑制剤【無添加浴】試験片②表面EBSD断面EBSDすべてRolling Direction方向からの結晶方位Tin110110001400350300250200150100500 すずウィスカ長さ(μm)初期1年目2年目3年目: 軌道上: 地上じる結果を得た(図9参照)。結晶成長抑制剤の無添加浴の皮膜では、軌道上と地上での粒形変化に特徴的な差異が生じており、軌道上では柱状でその幅が大きく変化したのに対して、地上では粒形がランダムに成長する結果であった。一方、ウィスカの発生メカニズムは皮膜内に応力が発生した時に、この応力を開放する過程でウィスカが発生するとされている。本事例では、結晶粒の大きさが変化することで内部応力が発生し、この応力を開放する過程でウィスカが発生したと考えられる。また、結晶粒の大きさの変化が少ない抑制剤添加皮膜ではウィスカの発生がないことも、このメカニズムの妥当性を示唆する結果と考察している。結晶成長抑制剤無添加浴の皮膜における地上環境では、1年以後のウィスカ長は飽和する結果を得ている(図10)。この原因は地上1年目では粒界の割れが多くなり、その後も冷熱試験を継続しても皮膜に内部応力の蓄積がなくなるためと推測している。一方、軌道上1年目のめっき皮膜では粒界割れ等は殆どなく、2年目以降のすずウィスカの成長状況が注目される。5.5コート剤の初期取得データとの比較結果パラキシリレン系コート剤については、硬度とヤング率の高さがウィスカ抑制効果の要因と考えており、ナノインデンターによる両者の計測結果を表5に示した。宇宙機で一般的に使用されているウレタン系コート剤よりも初期値で100倍程度の硬度となっている。初期データと、地上対照試験1年目と軌道上1図8軌道上1年目すずウィスカの断面SEM像図9結晶成長抑制剤の添加の有無と結晶サイズの関係EBSD(電子線後方散乱回折)分析結果図10冷熱テスト期間とすずウィスカ長さの関係軌道環境と地上環境の比較UYEMURATECHNICALREPORTSNo.79.2020軌道上における鉛フリー部品のすずウィスカ実証評価(WHISKER)15

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