テクニカルレポート79
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真空雰囲気での発生ウィスカ大気雰囲気での発生ウィスカ黒色塗装面が曝露される100mm20mm100mm実装基板試験片ブロック未コート領域ウレタン系コート領域パラキシリレン系コート領域2.3すず皮膜の結晶サイズとウィスカ発生の関係確認すずめっき浴に皮膜結晶の成長を抑制する添加剤を入れて作成した皮膜と、この抑制剤を添加しないで作成した皮膜の熱サイクルテストを行うと、抑制剤を添加した皮膜ではウィスカが発生し難いことが分かっている。軌道上においても同様の効果を示すかの確認を行う。また、上記の2.1項と2.2項の目的で使用したすずめっき皮膜には、抑制添加剤を使用しない比較的ウィスカが発生しやすい皮膜が用いられている。3WHISKER実験試料の構成と評価項目前述のWHISKERミッションを軌道上で遂行するためのWHISKER実験試料について説明する。熱膨張差起因のすずウィスカを成長させるためには、ある程度の温度差が必要となることから、軌道上の日照日陰で試料筐体に生じる温度差を大きくする(太陽光吸収率αと赤外放射率ε共に1に近い)必要があるため、図2に示すように試料筐体に黒色塗装(表面光学特性:α=0.91,ε=0.82)を施した。WHISKER実験試料の内部構成は図3に示す通り、1試料当たり次の3つの領域を配置した。①ウィスカ抑制対策のパラキシレン系コート領域②比較対象としての未コート領域③宇宙用として一般的なウレタン系コート領域各領域には、一般的な鉛フリー部品を実装した基板と試験品ブロックを設置し、試験品ブロックにはチップコンデンサ単体と銅板および42alloy板にめっきを施した試験片が搭載されている。これらの配置と試験片のめっき皮膜構成の関係を図4に示した。このWHISKER実験試料に対して、地上対照試験と軌道上曝露実験の実施年ごとに検査、分析を行う。なお、初期データについてはWHISKER実験試料を製作した際に取得済である。地上対照試験結果と軌道上曝露実験結果を、コート剤のウィスカ抑制効果の確認を目的に表2の評価観点でそれぞれを比較する。4地上対照試験の実施内容WHISKER計画のうち、地上対照試験については、軌道上曝露実験より先行して表3に示す条件に基づいて2016年12月22日より試験を開始している。なお、熱サイクル条件は軌道上における太陽ベータ角(ISS軌道面と太陽方向とのなす角)の季節変動などを考慮し、±15°区切りで熱サイクル条件を変えた。図2WHISKER実験試料の外観図1真空と大気における発生ウィスカの違い(熱サイクル-40℃~85℃2000cyc,矢印がウィスカ)図3WHISKER実験試料の内部UYEMURATECHNICALREPORTSNo.79.2020軌道上における鉛フリー部品のすずウィスカ実証評価(WHISKER)11

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