テクニカルレポート79
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FY2015FY2016FY2017FY2018FY2019FY2020実験試料軌道上曝露実験地上対照試験検証製作打上げ地上回収#1▲地上回収#2▲地上回収#3▲1年間2年間3年間1年間2年間3年間分析および評価1目的および背景近年、JAXA内外のさまざまなミッション要求(高性能、低コスト化)によって人工衛星への民生用部品の採用が広まりつつある。このような状況下において、長期間軌道上で運用する人工衛星等の搭載機器に鉛フリー部品を使用することが見込まれる。鉛フリー部品の実装において最も大きな課題はすずウィスカであり、すずウィスカは導電性のため、電子回路の短絡不具合に繋がる恐れがあることから、非修理系の人工衛星では致命的となり得る。このすずウィスカに対し、地上での評価・検討により得られたすずウィスカ抑制対策の有効性を、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟の簡易曝露実験装置(ExHAM)を利用した軌道上の実環境において最終確認することを目的とする。本実験名をWHISKERと呼称し、計画と準備を進め、2017年4月から3年間(表1)の軌道上曝露実験と、比較のために実施する地上対照試験を開始した。本書執筆時点(2019年9月)で、2年目までの曝露と試験が完了しているが、分析および評価が完了している1年目の結果を中心に報告する。2WHISKERミッションの概要WHISKERのミッションは、以下の2.1項、2.2項の2つの目的を軌道上で実証することである。なお、2.1項を裏付ける観点で2.3項の評価も行う。比較評価のため地上における対照試験(大気下における熱サイクル試験)も併せて実施する。2.1軌道上におけるすずウィスカの成長状態の観察熱膨張差(冷熱サイクル)起因によるすずウィスカが、軌道上における熱サイクル環境において成長することが想定されている。また、図1に示す通り真空環境下では大気環境下と比較して、同じ熱サイクルの条件でもすずウィスカは細長く成長することが確認されている。真空環境においても地上におけるすずウィスカの成長は飽和することが分かっており、軌道上においても同様の傾向であることを確認する。2.2コンフォーマルコーティングによるウィスカ抑制対策効果の確認熱膨張差起因のすずウィスカの抑制対策として、宇宙機器で用いられるコンフォーマルコーティング(以下、コート剤)の地上評価を実施し、パラキシリレン系コート剤がすずウィスカ抑制対策に有効であることが確認されている。本ミッションではこの抑制効果の評価を軌道上で行い、かつコート剤に対しては1年ごとの材料特性の変化(傾向)も確認する。軌道上における鉛フリー部品のすずウィスカ実証評価(WHISKER)宇宙航空研究開発機構(JAXA)中島健司中央研究所第1開発部岡田享表1軌道上実証と地上対照試験の計画10

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