第12話:これからの「めっき」

「めっき」の基本のおさらい

「めっき」の種類と用途

これまでのお話で、「めっき」でどんなことができるか? どんな種類があるのか? 実際にどこで使われているのか? などの疑問を

  • アクセサリーなど見た目の美しさを金や銀などの貴金属が使用される装飾めっき
  • 金属の腐食(さび)などを防ぐために亜鉛やニッケルが使用される防食(防錆)めっき
  • さまざまな機能(電気的、機械的など)を利用するために行われる機能めっき

などに分けて、それぞれ具体例で紹介してきました。実際に身のまわりで多くの「めっき」が活躍していることに、改めて気付かれた方も多いでしょう。

また、「めっき」は

  • 液体中で「めっき」を行う湿式めっき
  • 真空中で「めっき」を行う乾式めっき

に分けることができ、この「めっき物語」では湿式めっきを中心にお話してきました。その湿式めっきは

  • 電気の力を利用して金属皮膜を作る電気めっき
  • 化学反応を利用して金属皮膜を作る無電解めっき

に分類することができます。また、「めっき」の皮膜で利用される金属として代表的なものは金、銀、銅、すず、ニッケル、クロム、亜鉛などがあることを紹介してきました。

身のまわりで活躍する「めっき」

この「めっき」はさまざまなところに利用され身のまわりにたくさん存在しています。これまでにお話したものをおさらいすると、

  • スマートフォン・タブレット端末:内部にある基板、電子部品で「めっき」が多く使用されています。それらは「めっき」によって高性能な基板や電子部品となり、利用されています。
  • コンピュータ:中身はスマートフォンとほとんど変わりありませんが、大きく違う点はハードディスクが使われているか否かということ。ハードディスクも無電解ニッケルめっきを中心に「めっき」が使われています。
  • 自動車・バイク:電子部品に「めっき」が使用されています。さらに、機械部品への表面処理に「めっき」が活用され、表面を硬くする・滑りやすくする・寸法精度などの機能で活躍しています。
  • 家電・時計・カメラ:家電のほとんどには電子部品が使われ、もちろん「めっき」が利用されています。他にも手に触れる部分や、装飾的な役割でも「めっき」は利用されています。時計では、精密な機械に対する精密めっき、光学製品であるカメラには、黒めっきが利用されています。
  • アクセサリー:装飾めっきとして見た目の美しさや高級感を出すだけなく、樹脂などへのめっきで金属製のアクセサリーより軽量化して利用者の負担を軽減する、また貴金属めっきでアレルギー対策を施すなど、多彩に活用されています。
  • 半導体:電子部品の多くに使用されている半導体にも「めっき」が利用されています。極めて微細な「めっき」を行うので、他の場合に比べ特別な環境・液管理などが必要です。

他にも、ここでは紹介できていない多くのモノ、場所に「めっき」が使用されています。

環境への対応

「めっき」は環境に良くないというイメージがあるかもしれませんが、多くの環境規制に対応できる技術が研究されており、これからも「めっき」が使われつづけることをお話しました。また、作業環境や省エネルギー対策も進んでおり、あらゆる側面から環境負荷の少ない技術へと進化しています。

「めっき」の可能性を考える

これまでいろいろな製品やさまざまな場面で使われている「めっき」ですが、今後はどのような場面で使われるのでしょうか? 次世代の「めっき」技術の開発など最先端の研究・技術に携わる部門にアンケートを行いました。その結果を基に将来の「めっき」について考えてみましょう。

将来の機能的な予測も含まれておりますので、今後の「めっき」への可能性を感じていただければと思います。

研究者・技術者が考える、これからの「めっき」とは?

アンケート結果は下記の通りです。社内で行ったアンケートですので、順位などはご参考程度にご覧ください。

順位分野内容
1位ロボット分野近未来の夢物語だった、労働力としてロボットの利用が現実に近づいています。産業ロボットから人型ロボットへの進化が一般家庭への普及や、介護や危険作業の主力になる日も近いかもしれません。ロボットの制御には電子部品が、本体には機械部品が使われますので、さまざまな場面で「めっき」が活用される可能性が高いでしょう。
1位自動車分野ハイブリッドから電気自動車、燃料電池、また、衝突回避などの安全性サポートから自動運転へと進化を続けています。最も身近で技術の集約があらわれるモノなので、今より一層の「めっき」利用が期待されます。
3位医療分野再生医療やオーダーメイド医療など、医療技術は日進月歩で進展しています。現在、「めっき」が利用されるのは医療機器などに限られていますが、今後の「めっき」技術の進化で、幅広い分野で活用されたり、革新的な医療の誕生に貢献することも夢ではありません。
4位自然エネルギー分野太陽、水、風、波、地熱などを利用したエネルギー活用は、人類にとって最も重要な技術ともいえます。太陽電池のエネルギー変換効率の向上など、「めっき」のチカラで新たな機能・性能が創り出せるのは、それほど遠い日ではないかもしれません。
5位航空機分野自動車以上に今後の成長が期待される航空機産業で、「めっき」はすでに多くの部分で利用されています。航空機を製造するための部品点数は自動車の30倍~100倍といわれ、その裾野の大きさを考えると「めっき」の活躍できる場所はまだまだたくさんあります。

アンケートでは、この他にも「複合材料の開発」や「抗菌・衛生に特化した抗菌めっき」などにも、票が投じられていました。

皆さんは、これらの結果をどのように感じていただけたでしょうか?

すべての「表面」に広がる「めっき」の可能性

「めっき」について12回にわたりお話してまいりましたが、今回で最終話となります。 これまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

これまで言葉としての「めっき」はご存知でも、現在の「めっき」については初めて触れられた方も多いと思います。ここでお話したことは「めっき」のごく一部に過ぎず、実際にはさらに奥深い世界が広がっています。これをきっかけに「めっき」に少しでも興味をもっていただければ幸いです。

身のまわりにあるすべてのモノに「表面」が存在し、「表面」のある限り「めっき」が活躍できる可能性は無限に広がっています。
私たちは、「めっき」のスペシャリストとして、これからも「めっき」に注目していただけるよう研究を続けていく所存です。今後とも「めっき」に、ぜひご期待ください。