第10話:半導体と「めっき」

半導体とは?

半導体は、現代産業のコメ

本来、半導体とは「導体(電気を通す物質:例 金、銅など)」と「絶縁体(電気を通さない物質:例 ガラス、ゴムなど)」との間の性質を持つ「中間的な存在の物質 (シリコン、ゲルマニウムなど)」から名づけられたものです。その電気的な性質を利用して電子制御部品が作られ、現在では、その製品であるトランジスタやIC(集積回路)、LSIなどを総称して「半導体」と呼んでいます。

日本では、産業全体の基盤となり、生活に必要不可欠なものを「産業の米」と言います。高度成長期は鉄鋼がそう呼ばれていましたが、1970年代後半以降は半導体が「産業の米」となりました。今や、半導体は、電子機器や通信機器はもちろん、家電製品、娯楽機器、自動車、ロボット、カメラなど、あらゆる製品に使われています。

その半導体の製造では、通常の「めっき」とは異なるポイントがいくつかあります。ここからは、そこにフォーカスしてみましょう。

想像を超える細かな回路(微細パターン)

微細化を支える「めっき」の技術

半導体の代表的な製品であるIC(集積回路)は、製造技術の進歩により微細化を進化させてきました。この微細化に関わる有名な法則として「ムーアの法則」があります。この法則を簡単にいうと、「1年半~2年で集積回路の能力は倍になる」というもの。この法則が提唱された1965年から現在まで、ほぼこの法則どおりに実現されています。これは集積回路内の配線幅や配線間隔(ピッチ幅)が飛躍的に微細になっていくことで実現されてきました。現在ではnm単位(ナノメートル:1nmは10億分の1m)で配線が作られており、その製造は日に日に困難な状況になってきています。

ICチップ最表面の電極の表面処理に使われる電気銅・電気ニッケル・電気すず-銀・無電解ニッケル・無電解パラジウム・無電解金などの「めっき」は、その進化し続ける半導体の大きな原動力の一つになっています。

クリーンルームでの「めっき」

外気の1万分の1以下のホコリしかない環境

極めて微細な「めっき」が必要な半導体製造では、作業環境にも配慮が必要になります。半導体製造現場での「めっき」は、クリーンルームでの作業が必要になります。

クリーンルームとは、空気中のホコリの数を管理している部屋のことです。ホコリの少なさを表わす表現方法として【クラス○○】というものがあります。後ろの○○の部分には数字が入りますが、これは1立方フィート(ft3:約30cm×約30cm×約30cm)にあるホコリの数を表わしています。

半導体を製造する場合は「クラス100」以下が必要とされています。一般に、外気中は「クラス1,000,000」に相当すると言われますから、外気の1万分の環境で作業することになります。

前段でお話したように、ピッチ幅がnm単位になるとホコリがトラブルの原因になります。例えば、ショート(配線と配線が短絡・繋がってしまう)や回路に欠陥が生じる場合があります。そのためホコリなどの不要なものの影響を受けないクリーンルームでの作業が必要になるのです。

「めっき」液も綺麗に!(めっき液のろ過)

めっき液をろ過し、ホコリを取り除く

半導体では、「めっき」する作業環境に配慮が必要なことを紹介しましたが、同様にめっき液自体も微細なホコリが混入することが許されません。そのため、めっき液を使用する場合にはろ過する必要があります。

ろ過は液体中のホコリやごみを取り除くために行い、めっき工場ではろ過機を使用します。

めっき液をろ過すると液自体が分解し使用できなくなるのではないかと言われていた時代もありましたが、現在ではこのような「めっき」を行う場合にはろ過することが常識になっており、半導体の「めっき」でも精密ろ過が行われています。

近年、脚光を浴びる「めっき」

金の代替として使われるパラジウムめっき

パラジウムめっきは以前からコネクタなどの接点などに使われていましたが、金めっきの優れた性能にとって変わられていました。しかし、近年の金価格の高騰を受け、再びパラジウムめっきが見直され、脱金(金めっきを使わずに他の金属で代用する)や省金(金の使用量を減らす)の主役になりつつあります。

現在では、パラジウムもしくはパラジウムとニッケルや銀との合金が、多くの場面で使われるようになっています。

ほかにも、金めっきする場合のバリア層(金めっき層への他の金属の侵食を防ぐための層)として使用されたり、触媒(特定の物質の反応を促進するもの)として利用される場合も多くあります。

環境配慮で注目される無電解すずめっき

環境問題では、人体に有害で破棄の際に環境に負荷をかける重金属をできるだけ使用しないことが求められています。電子部品では、部品の接続で使用する「はんだ」に含まれる鉛が大きな課題で、「鉛フリーはんだ(鉛を含まないはんだ)」への転換が進められています。そこで、鉛を含まない「はんだ」の役割を果たす「めっき」として注目を集めているのが、「無電解すずめっき」や「すず合金めっき」です。もともと、すずは、はんだ濡れ性(はんだとの接着性)に優れており、コネクタへの「めっき」や、食器などにも使用されているように人体にも影響がない金属なので、今後も多く利用されるようになるでしょう。

燃料電池のキー技術となるプラチナめっき

環境にやさしい発電システムとして燃料電池が注目されています。水の電気分解(水に電気エネルギーを与え、水素と酸素に分解する)の逆の反応で、水素と酸素から電気エネルギーと水を発生させるシステムです。このシステムのもっとも中心となる部分にプラチナ電極が使用されます。

しかし、プラチナ自体は非常に高価なので、量産化には使用量を減らすことが必要になってきます。そこで「めっき」を利用することで、通常に比べ極めて少ない量のプラチナで電極を製造する技術が大きな期待を集めています。

「めっき」は未来を拓く技術

今回は紹介できませんでしたが、半導体は太陽電池にも使用され、そこでも「めっき」が活躍しています。そして、紹介したように燃料電池も「めっき」の技術によって実現できることがあります。

地球温暖化などを考えると、これからの技術は、エネルギーをより効率よく安価に供給できるかが、大きなポイントになってきています。「めっき」は、その一翼を担い、将来のエネルギー問題の解決に役立つことを目指して開発が進められています。

「めっき」でしか描くことができない未来 ― エネルギー問題への貢献も、その一つなのです。