第9話:アクセサリー(装飾めっき)

貴金属だけでアクセサリーを作ると、非常に高価になったり、重くなったりして、使い勝手が悪い場合があります。「めっき」はこうした課題を解決するだけでなく、新たな付加価値を与えています。また、楽器でも「めっき」は欠かせないものになっています。

装飾めっきとは

貴金属めっきのメリット

装飾めっきは、アクセサリーや調度品の装飾部分などに使用されています。いろいろな種類がありますが、やはり多いのは金や銀などの貴金属めっきです。その主な理由をまとめると、以下のようになります。

  • 見た目の良さ…綺麗な金属色
  • 高級感がある…金・銀・プラチナなど高価な貴金属による「めっき」
  • 防錆…汗などによる腐食を防止
  • 軽量化…貴金属だけの素材より軽量で身につけやすい
  • コストダウン…貴金属そのものより安価
  • 抗菌作用…金属の抗菌作用
  • アレルギー対策…貴金属は反応しにくい

アクセサリーで使われる「めっき」の特長

アクセサリーなど装飾目的で使用される代表的な「めっき」の特長を見てみましょう。

めっきの種類特長
金めっき高級感があり独特の色調。アレルギーも起こし難く、アクセサリーには最適。
銀めっき鏡面的な見た目が人気。ただし、長期使用で色がくすむ場合がある。
プラチナ(白金)めっき白金と称される美しさが人気。アレルギーなどにも対応。
ニッケルめっき多くのものに使用され、他の金属の下地としても使用されるが、アレルギーの問題がある。
クロムめっき独特な表面で、熱・腐食などの耐久性にも優れている。
ロジウムめっき銀めっきの表面に薄い膜として使用することで、銀の変色防止、光沢、強度などが得られる。
パラジウムめっきニッケルの代わりに金の下地めっきや、銀白色なのでロジウムめっきの代替としても利用。
チタンめっき表面が硬く、アレルギー反応を起こし難い。

「めっき」でアレルギー対策

金属によるアレルギーは、汗などで溶け出した金属がイオン化し、体内に入ることがきっかけで起こります。

溶け出した金属のイオン化は、第4話でお話した「イオン化傾向」に関連します。すなわち、「イオン化しやすい金属=卑金属」ですから、卑金属はアレルギーになる可能性が高くなります。アクセサリーでは、加工しやすく比較的安価な「めっき」であるニッケルめっきに関わるアレルギーの問題が、よく取り上げられています。

逆に、「貴金属=イオン化しにくい金属」なので、アレルギー問題も起こりにくいことになります。貴金属は、見た目の美しさと共にアレルギー防止の観点から、直接肌に触れるアクセサリーによく利用されています。

※金属アレルギーは体質に関係します。貴金属でもアレルギーを起こす場合がありますので、ご注意ください。

「めっき」と楽器の関係

音色にも影響する!?

楽器と「めっき」にも、深い関係があります。特に、トランペットやサックフォン、フルート、クラリネットなどの吹奏楽器には、「めっき」を含めた表面処理が大きな役割を果たしています。本体自体に「めっき」(表面処理)をするものもあれば、キー(指で押して音を切り替える部分)のみのものもあります。楽器の「めっき」(表面処理)は、見た目の高級感や腐食から保護することが主要な目的ですが、「めっき」(表面処理)の種類や皮膜の厚さは音色にも影響すると言われています(※)。

楽器の「めっき」は、見た目に高級感があり防錆にも長けている金めっきや銀めっきが多く使われ、楽器によってはニッケルめっきなどが使用されています。

※吹奏楽器はマウスピースやリードで発生した振動が音源となるので、表面の膜厚や膜の成分によって振動に大きな影響があり、音質が変わると言われています。

表面処理の世界

私たちの身の回りにあるものは、何らかの「表面処理」がされています。「めっき」はその主要な方法の一つです。下の図に、その表面処理の種類と特性を大まかにまとめました。

第1話でお話ししたように、「めっき」には湿式と乾式があり、それぞれに電気と無電解、物理蒸着と化学蒸着があります。
「めっき」の種類の一つである「溶融めっき」は、一般に「どぶ漬け」と呼ばれています。代表的なものは亜鉛溶融めっきで、大型の金属製品の防錆目的で使用されることが多く、コスト的にも安価な方法です。
「めっき」と同じく、物質の表面に金属皮膜を作る方法として、「溶射」があります。溶射は、高温で溶かした金属を物質に吹き付けることで金属皮膜を作ります。
また、金属以外のものも含めて表面を覆う処理では、「塗装」や「ラッピング」、「印刷」などもあります。
さらに、表面を何かで覆うのではなく、表面を削ることで表面処理をする方法として「研磨」があります。

表面処理と「めっき」の奥深い世界

今回は、装飾めっきを中心に「めっき」が楽器にも使われていることについて紹介するとともに、「めっき」も含まれる表面処理の世界の一端をご覧頂きました。「めっき」を含めた表面処理を追究していくと、見た目の美しさや高級感だけでなく、楽器では音色にも影響するように、「表面」だけではない「奥深い世界」に関係していることがわかります。

表面処理は、ある意味すべてのものに対して行われる処理で、その一つの「めっき」はさまざまなもので大きな役割を果たしています。身の回りのものには基本的に表面処理がされているので、見慣れたものでも「どのような表面処理がされているのか?」という観点で見てみると、違った側面が見えてくるかもしれませんね。